2024/07/03
ひとと地域に寄り添う
佐藤 春樹 さん
私は、組織設計事務所にて公共建築や物流施設を中心に様々な建築を設計しています。
用途や規模に関わらず「ひとの居場所」「地域へのふるまい」を常に考えて建築と向き合っています。
建築の内部空間だけでなく、外部空間への繋がりや拡がりを大切にし、その地域に根ざし未来に続いていくような建築を日々目指しています。
思い返すと大学に入った当初は、ただ与えられた課題をこなす日々を送っていました。建築を見に行くのは楽しく刺激的であり、設計課題も楽しかったのですが、なにか物足りないもどかしい思いをしていた記憶があります。
大学2年生の時に、スペインとフランスの建築を巡る海外研修に参加しました。ビルバオのグッゲンハイム美術館を中心とした街並みの美しさ、人が中心の街と居心地の良さに驚き、パリのノートルダム大聖堂では内部空間に入った瞬間に雰囲気に圧倒され自然と涙が出たことを鮮明に覚えています。当時は感覚だけでしたが、建築そのものの力強さ、人と人や街、環境や文化を繋いでいく素晴らしさを感じた瞬間であり、自分の中で大きな転機となりました。
その後は、先輩とグループで茶室を設計し施工するプロジェクトに参加したり、来る日も来る日も大学に泊まり込み設計課題に没頭していました。議論していく中で、視点が変わり新たなアイディアが生まれ、作品がアップデートされていく瞬間は本当に楽しくワクワクする時間でした。先輩後輩友人関係なく、あの場所で多くの時間を過ごし言葉を交わした日々が今の私の土台となっています。
赤堀研では設計課題のエスキースやコンペ、短期留学などを通じてここには描ききれないくらい多くの事を学ぶことができました。その中で赤堀先生は常に建築だけでなく、広い領域を横断し、自分に足りない部分のアドバイスをしてくれました。
とある物流施設の設計で、冒頭の2つの大切にしていることを軸に、地域に根ざす建築を提案しました。大規模な倉庫としてどのように地域に結びつくか、またその場所と人をどのように結んでいくかを考え抜き、小さなスケールのインテリアから建物外部までを横断して「地域」に寄り添ったプロジェクトとなりました。お客様に喜んでもらえたことはもちろん、大学・研究室で学んだことと実務が自分の中で繋がり、とても嬉しく思いました。「「新」建築設計資料06」という書籍にも、考えてきたことが評価され掲載されることとなりました。考えてきたことを大切にしながらも、チャレンジしていきたいと思います。