いま考えていること

東出 優子  さん

略歴

2012 建築工学科卒業(赤堀研究室)
現在  西沢立衛建築設計事務所

建築は完成するまでに、長い時間がかかります。毎日建築と向き合い続けるのは、本当に大変。けどその時間が、少しでもみなさんにとってあたたかいものになればと思い、この文章を書きたいと思います。

赤堀研究室を卒業後、外部の大学院に進学し、アトリエ事務所で働き始めてから、今年で11年目になります。うまくいかない時期もたくさんあったし、今でも自問自答と反省の繰り返しです。でもここ数年、自分自身が建築を本当に好きになっていることを感じるようになりました。

師とお世話になった現場監督にいただいた、大切にしている言葉が3つあります。

「何かを解決しようとするんじゃなくて、こんな未来があってもいいんじゃないかを語ること」

「一度大切にすると決めたなら、うまくいかないことも投げ出さないこと」

「現場の空気をつくるのはあなた。ものだけじゃなく、人間に対する愛と責任感をもつこと」

こう並べてみると、どれもその向こう側に人がいるように感じます。

うまくいかないことを、投げ出さないこと。それには勇気がいります。信じる勇気。もう一度前に踏み出す勇気。自分ひとりじゃ到底そんなエネルギーが出てこないときは、まわりの大切なものや人を思い出しています。

今日も暑い中、朝早くから遅くまで、弱音も言わずに現場で戦い続けてくれている人。思いや夢を託して、待っていてくれる人。そんな自分にとってかけがえのない人たちを思うと、強くなれる気がします。うまくいかないときも、大切な人から逃げたくはないです。こんな未来があってもいいんじゃないかを、遠回りしながら一緒に見つけていきたい。建築人である前にまずはひとりの人間として、目の前の人を思い、向き合える、愛と感謝と礼儀を持った人間でいたいです。

建築は大変。でもいつだってひとりじゃないです。どんなときも必ず、同じように未来を叶えようとしてくれている人たちとつながっています。自分の心のときめきに正直に、そしてそれを信じて、まわりの人を思う気持ち。そんな純粋な愛情や思いやりが、建築という美しく愛情深いものの素晴らしさと、その先の未来を描く力強さにもつながっていると、建築は夢にあふれていると、私は信じています。

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