プロフェッションを問う – 片倉隆幸

片倉 隆幸
(かたくら たかゆき)
1981年工学部建築学科卒
片倉 隆幸建築研究室主宰

学部学生の時から建築家というプロフェッションに憧れていたのでひたすら建築に没頭しました。当時から日本建築家協会関東甲信越支部住宅部会の会員であった、故みねぎしやすお先生からは住宅部会の話等もお聞きしていました。三井所清典先生には、ガイダンス授業の時に「この学校は一級建築士を育てるところではない。建築家を育てるところだ!」の一言に感銘しました。直接の指導は故石川洋美先生であり、建築家の生き方からすべてを見習うことが多く卒表後も一番長くお世話になってきました。

信州に住まう。そして建築家として仕事ができる喜びを心から感じています。当時非常勤講師であった斎藤孝彦先生には、直接の指導を受けなかったものの、住宅部会の会員であり僕が日本建築家協会関東甲信越支部の住宅部会長を務めた2017年に建築家のプロフェッションをテーマに進めさせていただきお世話になりました。以後、斎藤孝彦さんとプロフェッションを語る会を建築家協会の9人のメンバーで結成、会議を続けています。昨年斎藤孝彦さんは亡くなられましたが、会は引き続き、今までの責務だけの契約書でなくて正当に建築家のプロフェッションを伝えていく合意書を作成することができ、実践しているところでもあります。斎藤さんは常々建築家の日々の行動が、いかに大切かを述べておりました。プロフェッションの五原則(注)を今の時代の中でどのように自分なりに捉えて生きていくか?特に住宅を専門に設計する立場として、新しい公共とは何か?を常に考え続けています。住まいの修景も古いものから最近の建築の増改築、新築も周りとの関係が大切です。境界を曖昧にする建築と外部空間、歴史と現在、現在と未来、僕と社会が、心の奥深くで交差する日常です。たまたま自分がその順番を受け継ぎ、表現させていただいているのだという責任感が、心をふるいたたせる。寿命の長い建築を目指して、すべてのものへのいたわりと感謝は続きます。

学生の教育にも関わっています。今我々に必要なことは何か?今社会に必要とされていることは何か?長く追いかけるテーマ、学生の皆さんには、思想を育ててほしいと思います。建築家として何がこの社会でできるのか?問いかけは永遠に続きます。もう一度芝浦の学生と授業を共有してみたい。

(注)プロフェッションの五原則:専門性、公益性、非営利性、個人性、団体性