2024/12/03
元初を考える
武井良祐 さん
現在私は東京と大阪の2拠点で建築設計事務所の共同代表を務めています。今回は最近考えていた事について書きたいと思います。
「私は元初を愛する」これはルイス・カーンの有名な言葉で、建築の元初とは何か?そもそも建築とは何か?都市や風景や生活とは何か?といった様々な根源を考える上でとても好きな言葉の一つです。
元初とは物事の最初に現れるのではなく、事態が進展していくに従ってその本当の姿が現れる、つまり出来事が終わる時にようやく現れる、といった意味です。建築の設計をしていると、設計中にあれこれ考えていた事が建築空間として出来上がりそこに人が入り、活動が生まれた時に、自分の目指していた事はこーゆー事だったのか、と気づく事があります。私にとってその瞬間がこのプロジェクにとっての元初、根源的な出来事なのかも、と思います。
元初という事で他に思うことは、大学での学びについてです。私の場合は所属研究室の原田真宏先生からの影響はとても大きくて、大学院は別の大学に行ったのですが、私の建築設計の根源的な中心には原田さんからの影響が大きく残っていると思います。また、学部2年生や3年生の時に課題で悩んでいたテーマを今でも考える事があったりと、建築を学び始めた大学教育の影響というのは確実にあって、最初に学ぶ環境というのは後々の自分にこうも影響を及ぼすのかと驚きます。
「学ぶ」という行為はとても素晴らしい事だなと感じます。建築を始めた頃のワクワクや自分の興味ある事を色々試してみて、成功したり失敗して学ぶ、こういった最初の感動や建築をつくる喜びが現在も続いて建築設計を持続的にやっていけているのだと思います。
またこの興味の持続には「学びの連鎖」というものがあると思います。自分の考えている事を友人や先生に話をする、どこかで発表したり発表を聞いたり、本を読んだり、様々な物事との学びの連鎖があるからこそ、持続が可能だと感じます。今後もこういった学びの連鎖を自分自身続けられる様に、またこれからの新しい世代にも少しでも感じてもらえたらと思い、この文章の締めとします。