“建築とテクノロジー” なキャリア -中島貴春

    

中島貴春
(なかじまたかはる)
2011年 建築工学科卒業
   (木本研究室)
2013年 理工学研究科
    建設工学専攻修了
株式会社フォトラクション
代表取締役CEO

私が学生だった頃はiPhoneやiPadが発売し、ガジェット好きだった私にとってとてもワクワクする時代でした。それから10年が経過し、今ではPhotoruction(フォトラクション)という建設業向けのクラウドアプリを開発する会社の代表として働いています。その前は竹中工務店のIT部門にいましたし、大学ではBIMに関する研究をしていたと言うことで、キャリアのほぼすべてを建設テック(建設×テクノロジー)にささげているような人間です。


もともと建築よりもITが好きな所があったためか、建築学生っぽい思い出はほとんどありません。模型造りに拘り没頭したことも、仲間と一緒に建築を見に行くことも、卒業設計で徹夜することも、どれもこれも経験していません(笑)。ただ、小学生の頃からインターネットの上で何かものづくりをすることが好きだったので、図面の代わりにコードを書いてアプリを開発していました。別にIT企業に就職したかったわけでもなく、面白くて趣味みたいなものだったのですが大学4年次に転機が訪れます。


私の恩師である木本先生は、当時では珍しくBIMをテーマに研究をしていました。そこでプログラミングスキルが必要になり、初めて自ら建築に取り組んでみたいと思った記憶があります。BIMを積極的に触りたがる学生も少なく重宝したのか、研究室に入ってから木本先生はゼネコンや業界団体とのBIMに関する調査や研究をはじめとした、様々なことを任せてくれました。その際に、インターネットの世界では当たり前になっていることが、建設業界では実現できていないことに気がつき、仕事にしたら面白いなと思いました。木本先生は在学中に亡くなってしまい、私の知識が多少は追いついた今、お酒を飲みながらBIMの未来について議論できないのが残念でなりません。


そうした出会いがなければ、今は何をしているかわからないと思うと、先を考えて技術を身につけるという事は非常に難しいなと思います。胸を張って言うことではありませんが、私は学生時代に設計者になろう、や施工管理で所長になろう、と言ったキャリアに関しては何も考えていませんでした。自分が正しいと思うこと、価値があると思うこと、そして楽しいと思うことに取り組んでいました。芝浦工大には何となくそれを良しとする土壌があるように思えます。当時は知りもしなかった「社会に学び、社会に貢献する技術者の育成」と言った建学の精神が反映されている校風だなと今だからこそ思えます。世の中の建築学生に設計でも施工でもない、全然違う選択肢もあるよということを示せるよう、これからも建設テックの仕事を楽しみながら頑張っていきたいと思います。

株式会社フォトラクション(https://corporate.photoruction.com/